どっちもどっち、じゃない? [けーざいもどき]
昔、うまい地酒といえば二級酒と決まっていた。まずかったからなのかといえば、もちろんそうではない。審査に出さなかったので、自動的に二級酒に分類されるようになっていたのである。
じゃあ、なぜ審査に出さなかったのか。「酒の優劣をつけるのは買ってくれた客だ」という酒蔵もあったのかもしれないが、かなり多くのところが「酒税を下げるため」という感じだったと思う。そう、日本酒の級を審査していたのは国税庁で、審査の結果特級になると酒税があがる、という、よく考えると変な制度だったのである。結果、この級別制度は廃止されることとなった。
昨今、ビールにかかる酒税を回避するために、ビールもどき(とあえて書く)がいろいろ作られている。ビールとほとんど変わらない味わいで、「発泡酒」「その他雑酒」に分類されるように材料や製法を工夫している努力は大変だと思うし、そうやって作った結果が世間に認められた途端に「扱いは同じなのだから、かかる税金も同じにしないといけない」なんて言われて努力が無駄になるのは堪えられないだろう。
……が、ちょいまち。なんでビールメーカーは、そんな努力をしなきゃならないのだ? のみたいのは「ビール」なのに。
なーんか、努力の方向が違うように思えて仕方ないのだ。
なんでこんなことになるのか。それは、ビールの価格に占める税金の割合が高すぎるからに他ならない。
国税庁のホームページの「Q2 清酒やビールなどお酒の価格に占める税金の割合はどのくらいですか。」にある酒の種別ごとの税負担率の比較表を見ると、ビールの税負担率が一番高い。消費税込みでの負担率ではあるのだが、これだけ税金の割合が大きいと、「なんとかビールのフェイクを作って税金を回避すれば、価格競争で優位に立てる」という発想に立つのは無理もない。
が、やはりそれはおかしい気がする。
もちろん、酒にはドラッグという側面があり、税にはそれによる損失を社会全体で補填するための仕組みである、というのは否定しない。それならば、すべての酒は含有アルコール量に比例する形で課税するほうが自然に思われる。
そろそろはっきり書こう。
政府とビールメーカーのやり取りは、「とにかく税収をあげたいやー」と「せっかくの抜け道つぶすなやー」というやり取りにしかみえない。どっちに理があるわけでもない、どっちもどっち、じゃない?
今はまだそうでもないが、それでもだんだん、ビールが「高級品」になって気がしてきている。(この辺はなんかちゃんとした根拠を探さないといけないのだが) そのうち、普通に手に入るのは「ビールのようなもの」になってしまうんじゃなかろうか。いや、それでもまだ手に入ればいいけれど、ね。
日本酒の場合にはまだ「審査に出さない」という道があった。しかし、ビールにはそういう選択肢すらない。
酒には、文化、という側面もある。
日本のビールは、ロードウォリアーズだって誉めてたんだぜ。
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